予防医療について
ワクチンとは
ワクチンは、感染症の原因となる各種の細菌やウイルスの病原性を弱めたり、無毒化したりしてつくられた一種の抗原です。
これを注入することによって、体内に抗体*をつくらせ、接種以後、当該感染症にかかりにくくし、また重症化を防ぎます。
現在、動物用ワクチン(犬、猫)では、下記のようなワクチンが開発されています。
動物用ワクチンを定期的に接種することによって、大事なペットを感染症(伝染病)から守りましょう。
*抗体:病原体と結合し、それを体内から除去するように働き、病気から体を守るたんぱく分子。簡単に言えば、感染症に対する抵抗力のこと。
ワクチンの種類(犬用・猫用)
- 犬用
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- 狂犬病
- ジステンパー
- 犬コロナウイルス感染症
- レプトスピラ症
- パルボウイルス感染症
- 犬パラインフルエンザ
- 犬伝染性肝炎
- 犬アデノウイルス2型感染症
- 猫用
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- 猫汎白血球減少症
- 猫ウイルス性鼻気管炎
- 猫カリシウイルス感染症
- 猫白血球ウイルス感染症
- クラミジア感染症
- 猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)
狂犬病ワクチン
病名に「犬」という文字が入っていますが、狂犬病は人や猫、家畜や野生動物を含めたすべての哺乳類が感染しうる伝染病(人獣共通伝染病)です。
ウイルス性の感染症で、一度発症すると現代医学をもってしても根治はできず、致死率ほぼ100%という恐ろしい病気です。
主な犬の症状は、むやみに歩き回り柱や石などの物体にかみついたり、地面を無意味に掘る、狼のような特徴的な遠吠えなどの「異常行動」から始まり、進行すると「全身の麻痺」が起こりやがては昏睡して死に至ります。
幸い日本では、予防注射の徹底と厳重な検疫により、半世紀以上(1957年以降)発生していません。
しかし、海外(特にアジア)では、まだまだ狂犬病の発生が多く、毎年数万人がこの病気で命を落としています。
日本にも、いつ侵入して来ても不思議ではありません(犬以外の動物から入ってくる可能性もあります)。
そのため、日本へ入国する際の検疫を強化するとともに、飼い犬全体の免疫保有率を高くしておくことが不可欠と考えられます。
「狂犬病予防法」により、毎年1回の狂犬病予防注射の接種が義務付けられています。
万が一国内に狂犬病が持ち込まれた際、被害を拡大させないための対策として、毎年必ず予防注射を接種してください。
※混合ワクチンとの同時接種は体調への配慮から推奨していません。可能であれば1ヶ月以上間隔を空け、別々に接種することをお勧めします。
混合ワクチン
混合ワクチンは、「狂犬病ワクチン」とは異なり、法で定められたものではなく、飼い主の判断による“任意接種”となります。
しかし、現在も発生している伝染病もありますので、予防のために混合ワクチンの接種をお勧めしています。
また、多くのペットホテルやドッグランが、その利用条件に「ワクチン接種済み」であることを挙げるようになっていますので、そのためでもあります。
当院では、犬で5種混合ワクチン、10種混合ワクチン、猫で3種混合ワクチンを採用しています。
接種するワクチンは、ペットの年齢や飼育状況により変わってきますので、来院時に相談してください。
なお、ワクチンでは、接種後の副作用やアレルギー反応が全く無いとは言い切れません。
そのため、なるべく午前中の接種をお勧めしており、何かあった場合にすぐに対応できるよう、接種後30分くらいは動物病院の近くでペットの様子を見守るようにすると良いでしょう。
異変を感じた際にはすぐに連絡をしてください。
猫白血病ウイルス感染症
猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫の血液・唾液・精液・乳汁などの体液を介して感染が広がります。
外に出る猫、特によくケンカをする猫、また、ウイルス陽性猫とのグルーミングや同じ食器で飲食をする猫で感染の可能性が高くなります。
ただ、感染力の弱いウイルスなので、持続的に感染するのは子猫や免疫力の弱い猫がほとんどで、健康な成猫での持続的な感染は稀です。
しかし、一度持続感染に陥ると完治は不可能で、徐々に免疫不全状態となり、リンパ腫や白血病といった腫瘍性疾患を発症したり、 その他のFeLV感染に関連した疾患がもとで多くは4年以内に亡くなってしまいます。
完全室内飼いでFeLV陽性猫との接触が無い環境で飼育していれば、まず感染の心配はありません。
外へ出る猫や同居猫の中にFeLV陽性の猫がいる場合は定期的な予防接種が必要になることがあります。
保護猫や野良猫など、過去の生活環境から感染の可能性がある猫を飼い始める時、特に先住猫がいる場合は自宅へ迎え入れる前にウイルス検査をする事を推奨します。
※猫白血病ウイルスに対するワクチン接種をご希望の場合は事前にご相談ください。
猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)
猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染している猫の血液・精液などの体液を介して感染します。
外に出る猫、特によくケンカをする猫で感染の可能性が高くなります。
数カ月~数年の間に病気が進行し、発症すると免疫不全状態となり死亡してしまいます。
ただ、適切な飼育管理ができれば天寿を全うするケースもある病気です。
完全室内飼いでFIV陽性猫との接触が無い環境で飼育していれば、まず感染の心配はありません。
また、猫エイズという言葉の響きから、人への影響を心配される方もいますが、猫から人への感染は起こりません。
確かに人のエイズウイルスと近縁のウイルスが原因ですが、別のウイルスですのであくまで猫の病気です。
保護猫や野良猫など、過去の生活環境から感染の可能性がある猫を飼い始める時、特に先住猫がいる場合は自宅へ迎え入れる前にウイルス検査をする事を推奨します。
FeLV・FIV感染症について
どちらの病気も適切な飼育環境を維持できればまず感染の心配はありません。
しかし、万が一感染してしまうと猫の健康や寿命に大きな悪影響を及ぼす病気です。
FeLVはワクチンでの予防法もありますが、それでも100%感染を防ぐ事はできません。
また、以前は国内でもFIVに対するワクチンがありましたが、2023年に国内での新たな供給がなくなり、終売となります。
そのため、感染をさせない環境で飼育することが一番の予防法であり、
最も確実な予防法として、当院では猫の完全室内飼いを推奨しています。
これは、ご自身のペットの健康を守る事はもちろん、地域で病気を蔓延させないためにも重要な事であると考えています。
しかし、様々な理由から既にウイルスに感染した猫を飼育することになったり、感染の可能性がある環境での飼育を余儀なくされる場合もあると思います。
もし、病気の予防や飼育法で不安を感じることがあったら、当院を受診してください。具体的なアドバイスができると思います。
フィラリア予防について
まずは、血液検査を受けて、フィラリアに感染していないかどうかを調べましょう。フィラリアは、蚊が媒介するため、夏を越すたびに感染率が高くなります。
血液を検査すれば、感染の有無がわかりますので、必ずチェックしてください。
フィラリアは、きちんと予防すればほぼ確実に防ぐことのできる病気です。
毎年、必ず定期的に、「予防薬」を投与してください(残念ながら、フィラリア感染を予防できるワクチンはありません)。
この予防薬は、蚊から感染した幼虫が心臓にたどり着くまでに、駆除する薬剤です。
フィラリア予防薬として一番よく使用されているのは「内服薬」(経口剤)です(注射タイプ・スポットタイプもあります)。
内服薬は、月に1回、つまり1ヶ月間隔で投与します。
毎月1日、あるいは月末といった具合に、覚えやすい日を設定し、最後まで忘れずに飲ませるようにしてください(投薬を忘れた場合は、自己判断をせずに、獣医師の指示を仰ぎましょう)。
予防期間は地域ごとに異なりますので、必ず獣医師の指示に従い、きちんと投薬しましょう。