犬・猫の去勢・避妊手術について
去勢・避妊手術は、もともとは望まれない妊娠によって不幸な動物が生まれないように行われていた手術です。
オスでは精巣の摘出(去勢手術)、メスでは卵巣(子宮)の摘出(避妊手術)をします。
これらの手術を行うと、永久的に妊娠する(させる)ことができなくなります。
去勢・避妊の目的は疾病の防止等
しかし最近では、去勢・避妊手術は、従来の「望まれない妊娠を避けること」よりも、将来的に起こり得る各種疾患の防止、発情徴候(出血、異常な鳴き声など)、スプレー(所構わず尿をかけてしまう行動)、攻撃性およびマウンティング(後ろに覆いかぶさる行動)などの問題行動を防止することのほうに、むしろ重点が置かれています。
また、発情徴候を抑える以外の手術効果は、手術時期が遅くなるにつれて薄れていきます。
去勢・避妊手術の問題点
去勢・避妊手術は全身麻酔下で行う手術です。
この全身麻酔と手術という行為自体は動物の体にとって負担になります。
また、手術部位からの出血や感染、血管を縛ったりキズを縫ったりする際に使用する糸に対する炎症反応、ホルモンバランスの変化による尿漏れ(メスの場合)・性格の変化・太りやすくなる、などが起こる事があります。
これらが問題となる確率はかなり低いのですが、生まれ持った体質や手術当日の体調によっては思わぬ事態が生じる可能性があります。
去勢・避妊手術の問題点の対策
上記の問題点に対して無策で手術を行う事は致しません。
手術前に血液検査による体調チェックを行い、静脈点滴をすることで体調を整え、手術中は生体モニターにより常に状態を確認できるようにしています。
また、全身麻酔の前後は十分な酸素を供給し、不測の事態に備えます。
出血部位の止血や抗生剤の予防的投与、使用する糸などの道具の選択もしっかりと行っていきます。
このような対策により安全性を高める事ができるため、去勢・避妊手術においては手術によるデメリットよりもメリットの方が大きいと考えています。
これらのデメリットを最小限にし、メリットを最大限に得るため、生後6~12ヶ月での去勢・避妊手術を勧めています。
去勢・避妊手術で防止できる主な疾患
オス
- 前立腺肥大症
- 精巣腫瘍
- 会陰ヘルニア
- 肛門周囲腺腫 など
メス
- 子宮蓄膿症(子宮に膿が溜まる病気)
- 乳腺腫瘍
- 卵巣・子宮などの生殖器腫瘍 など
去勢・避妊手術のデメリット
オス・メス共通
- 麻酔、手術による体の負担
- 手術部位の出血、感染
- 縫合糸反応性肉芽腫(炎症反応)
- 性格の変化
- 肥満傾向 など
メス
- ホルモン性尿失禁(尿漏れ) など